ホムンクルスは脱フラスコの夢を見るか

脱ニートを目指す絵描きな引きこもりが、主に週間・月間・年間ごとに振り返りを残すブログ。

#240 1500円の売上を7500円に引き上げた話【週間報告(7/23-7/29)】

 なかなかビジネスライクで露骨なタイトルですが。

 これまでなかった事例で、こういう見方・考え方も割と大事だったりするので、書き残しておこうと思います。

 

 7月第5週に完成・公開したイラストは、こちら。

 

 

 以前出した、FEのカミラのリファレンスシートです。

 本当は立ち絵と一緒に投稿できればよかったんですが。

 立ち絵を描く前に正面のデザインは出来上がっていたものの、背面を描くのがめんどくさくて、後回しにしていました。

 特にウェーブがかった後ろ髪に抵抗感があったり、参考画像を探していたりしたので。

 

 それと、ココナラで依頼を1件完了しました。

 7月はこれで2件完了。

 6月下旬から数えると、30日以内に3件の受注です。

 ようやく及第点な成果が出せましたが、まあ、ただの運だと思います。

 去年の6月みたいな、偶然、依頼をしたいと思った人が重なっただけ。

 知名度は低いし、ココナラでのサービスページの閲覧数もかなり少ないので、改善できる点はかなりあります。

 

 さて、タイトル回収でも。

 

 先日完了した依頼ですが。

 以前ご依頼をいただいた方からのしばらくぶりなご相談。

 内容としては、1年前に描いた立ち絵の差分を作ってほしい、とのこと。

 本来であれば、今の料金設定だと1500円になる予定でした。

 

 ただ、ぶっちゃけ言ってしまえば、1500円は安い。

 安すぎる。

 

 これまでココナラで受けてきましたが。

 もし、この金額でココナラを介して制作をするとなると、手数料で惹かれて1200円弱に。

 ライトノベルかマンガは買えても、ビジネス書は買えない。

 それならいっそ、アマゾンギフトカード払いで直接取引をするか……? と。

 

 いや、ちょっと待て。

 1500円をいただくにしても、得られるのは1500円だけ。

 ただ、お金が増えるだけです。

 

 それのなにがおかしいか。

 これまでココナラを介して依頼を受けていたのは、プラットフォームであり、市場だからです。

 どんなサービスを出品しているか、だけではなく。

 実績数と評価が記載されます。

 

 その2つは、信用の指標です。

 実績数は自己申告ではなく、取引が無事完了することで、システム的に加算されます。

 評価は、取引が無事完了した後、購入者様によって記入されます。

 

 例えば、

『実績:50件』
『ココナラでの販売実績:20件』

 とあったら、どちらが信憑性があるでしょうか。

 どちらが説得力があるでしょうか。

 

 さらに後者には、評価と購入者様の声が加わります。

『丁寧な対応で安心して依頼できました!』
『私のこだわりを汲んで、細かく描き込んでいただきました』
『大満足なクオリティでした!』

 

 無名で、実績も乏しいのであれば、知名度のあるプラットフォームで示される実績数や評価は、多少なりともアドバンテージになります。

 評価と購入者様の声は、特に。

 その出品者に依頼して大丈夫か、これまで依頼した人はどんな感想を持っているか、出品者の人柄や雰囲気を知ることができます。

 

 そういった理由から、今はなるべくココナラやSkebなどといったプラットフォーム頼りなやり方をしているのですが。

 

 なかなか条件が悪いな、と。

 これまで差分だけの取引はしたことがなくて。

 するにしても、ココナラを経由したら手数料が引かれて書籍1冊分にもならない。

 そして、1年以上前の立ち絵。

 基本的な絵柄は変わらないものの、この1年で描き方や雰囲気が変わりました。

 ……1年以上前の自分に合わせて描きたいか? と。

 そのために時間を支払いたいか? と。

 

 そこで、提案しました。

『立ち絵のリメイクはいかがでしょうか?

 ・1年以上ご愛用いただいた
 ・完成品のリメイク

 という観点から、今回に限り、立ち絵の料金を50%オフで承ります。

 以降リメイクをご依頼された場合、その時の料金から10%を割引した金額で承ります。』

 と。

 

 現在、全身立ち絵の料金は10000円です。

 50%オフということで、5000円。

 

 提案からいくつか質問をいただいて、答えた後、立ち絵のリメイクを承諾していただきました。

 そして制作が始まってから、立ち絵のカラーラフの段階で、差分の追加がありました。

 これで売上は7500円に。

 

 当初、1500円だった金額を、7500円に引き上げることができました。

 リメイクの提案を受けていただいた依頼者様には感謝です。

 

 とはいえ、ココナラを介したので、実際の手取りは6000円弱。

 それでも、書籍1冊を買えるだけの利益になりましたし、実績数と評価が増えました。

 依頼者様からも、以前よりもさらによくなった、とご満足の感想をいただきました。

 想定外の出費をさせてしまったものの、すごく喜んでもらえるくらいの提供ができたので、成果としては上々です。

 

 さて、もう少しビジネスライクに踏み込んだ話をすると。

 

 今回の提案で大事だったのは、

1.正当で納得のいく理由付け
2.頭と尻尾はくれてやれ

 の2点だと思います。

 

1.正当で納得のいく理由付け

 立ち絵のリメイクとして、現在の全身立ち絵の料金から50%を割引しました。

 本来10000円のところを、5000円に、ですね。

 

 もしかすると、断られていたかもしれません。

 やみくもに、ただ「買ってほしいから」と、50%オフにしていたら、承諾してもらえなかったかもしれません。

 

 なぜ50%も割引するか、その理由を伝えました。

 1年以上、その立ち絵を使ってくれたから。

 リメイクだから、通常の立ち絵制作より手間がかからないから。

 その金額にするだけの理由付けがなかったら、リメイクだけでなく依頼自体断られていたかもしれません。

 

 そして、もし理由付けもないまま半額にして、リメイクを承諾されていたら、自分を安売りしているイラストレーターとして、自身の価値を落としていたのではないかと思います。

 

2.頭と尻尾はくれてやれ

 これは投資界隈での、魚に例えた格言だったと思いますが。

 全部食べずに、おいしいところだけ取っていけ、と。

 

 今回、依頼者様のご希望は差分だけでした。

 立ち絵のリメイクは想定していません。

 つまり、予算を大きく上回る出費をすることになります。

 

 ここで、全身立ち絵だからと現在の金額である10000円を提示するのは、悪手です。

 リメイクの提案をする前に、差分の制作にかかる金額を1500円と伝えていたのもあって、そこに10000円を加算すれば、依頼者様の心理的ハードルがかなり高くなります。

 よって、断られる可能性が高まります。

 

 そこで、今回の依頼で得られる収益で私はなにをしたいか、を考えました。

 とりあえずビジネス書を1冊くらいは買えるようにしたいな、と。

 

 だからといって、本当に1冊分相当の金額にするわけではなくて。

 全身立ち絵の制作という点も踏まえて、割引できるのは50%が最大でした。

 

 その結果、取引開始前の見積り金額は6500円。

 取引開始後に差分追加で1000円加算。

 よって、合計7500円。

 当初の想定売上から5倍の金額で購入していただきました。

 

 商売の基本は、提供だと私は考えています。

 提供、提供、提供。

 私はどんな人に、どんなものを、どうやって提供するか。

 提供できるか。

 

 その提供だって、イラストで言えば、提示された依頼内容に沿っただけのものではなくて。

 依頼者に新しい気づきや発想を提示したり、金額以上の満足感を覚えてもらったり、感動してもらったり。

 制作物を納品する以外での価値も伴ってこそ、提供が成り立つと考えています。

 

 今回は、本当に運がよかったと思います。

 タイミングがよかった、とも言えるんじゃないかと。

 前回の立ち絵制作から1年以上経過していて。

 時間経過と共に、私のクオリティも高まっていて。

 実績の増加に伴って、料金を値上げしていて。

 もしこれが前回の制作から1ヶ月後、3ヶ月後、半年後だったら、立ち絵のリメイクの提案はできませんでした。

 差分の制作だけで、1500円で受けていたかもしれません。

 

 絶好のタイミングで、最適な決断を下す。

 これはなかなか難しいです。

 毎度毎度できるようなことではありません。

 

 ただ、それをするための、それができるための準備や勉強くらいはしておくべきなんじゃないかな、と。

 以前、実績数と料金設定について触れたことがありますが。

 料金を上げれば、売上が増えて依頼の数が減ります。

 ただ、料金を上げることは、交渉の幅を広げることにも繋がります。

 

 今回の事例がまさにそうで。

『全身立ち絵なら5000円です』
『全身立ち絵の料金は通常10000円ですが、今回に限り〇〇という理由から、50%割引して5000円とさせていただきます』

 どちらなら、依頼しようと思うでしょうか。

 どちらなら、お買い得感があるでしょうか。

 後者だと思う方が多いんじゃないかと思います。

 つまり、ギャップです。

 このギャップによって、依頼者の購入意欲を高めたり、依頼に対する心理的ハードルを下げることができます。

 料金を高く設定する、ということは、こんな風に依頼者との値段交渉の手札を増やすことに繋がります。

 

 さて、だいぶ長くなりました。

 冒頭、なにを書こうかと30分くらい白紙のままに悩んでしまって。

 ここまで書いたところで、合計3時間以上もかかってしまいました。

 

 今回書いたことも、今後なにかしらのコンテンツとして発信したいですね。

 特に、私と似たような境遇の方の役に立てたらいいな、と。

『金なし、コネなし、実績なしの孤独なニートがイラストを描いて脱ニートするまで』

『孤独なニートの、孤独なニートによる、孤独なニートのための脱ニート戦略書』

 そんなコンテンツなり商品なりを作るためにも、色々と頑張ろうと思います。

 

 では。