ホムンクルスは脱フラスコの夢を見るか

脱ニートを目指す絵描きな引きこもりが、主に週間・月間・年間ごとに振り返りを残すブログ。

#256 商品づくりの振り返り

 8月から始めたイラスト販売用の立ち絵制作について、振り返りをしようかと。

 

 2023年8月下旬に始めたイラスト販売用立ち絵制作が、同年10月10日に完成させることができて、出品するに至りました。

 制作内容は、こちら。

 

 

「重戦士詰め合わせ『甲-Armored-』」と銘打った、立ち絵素材集。

・武器を持ち、甲冑を着た人物キャラクターを男女各3体
・表情差分を17種
・表情差分含め、立ち絵そのものを編集、加工できるPSDファイル

 といった内容になっています。

 

 着手開始から出品までの期間は、リサーチなどの準備期間も含めると48日。

 

 今回、なぜ重戦士キャラの素材集を制作、出品しようと思ったか。

 きっかけは、ストック収入を作りたい、と考えたからだったと思います。

 BOOTHで立ち絵素材を見て、立ち絵素材の需要を調べていくうちに、DLsiteでも立ち絵素材が販売されていることを知りました。

 

 では、BOOTHとDLsiteでは、どんな立ち絵が売れているか? と需要の傾向の調査を行いました。

 分かりやすかったのが、DLsiteです。

 検索結果のソート方法に、「人気順」と「販売数が多い順」がありました。

「人気=販売数が多い」ではないか? と思いますが、別物です。

「人気順」はおそらく、直近の特定期間内に販売されて多く購入された順に並べる項目であり、「販売数が多い順」は、期間を問わずに、販売数の多い商品から順に並べる項目です。

 実際、人気順のトップページに並んだ商品よりも多く購入された商品があるのに、上位表示されていませんでした。

 対してBOOTHですが、「人気順」や「スキ順」といった項目がありますが、実際どれだけ購入されているかまでは分かりません。

 ある程度需要の傾向は見えつつも、DLsiteと比べると不明瞭だと感じました。

 

 そこで、需要の傾向が分かりやすいDLsiteにターゲットを絞りました。

TRPG 立ち絵」という検索キーワードの結果を、「販売数の多い順」で並べ替えると、1人のクリエイターの商品の販売数がダントツで多いことに気づきました。

 1つの商品の販売数が多いだけではありません。

 出している商品の多くが、他の商品よりも販売数で飛び抜けています。

 

 1000以上ある商品の中で、販売数が100を超えている商品は、わずか20前後。

 販売されてからの期間を考慮から外しても、販売数100超えの商品は0.1%もありません。

 そして、その20前後の中で、販売数が1000を超えている商品は、5つもありません。

 その数少ない、販売数が1000を超えている商品を出しているのが、たった1人のクリエイターです。

 名前は「Sさん」としておきましょう。

 

 その、販売数が突出しているSさんについて、調べました。

・商品の販売数
・販売開始日

 といった項目に着目して、

・売上の想定総額
・月間あたりの想定販売数
・月間あたりの想定売上

 といった成果の想定値を割り出しました。

 

 例えば、販売開始から1年を超えている商品に着目して、月間あたりの想定販売数を見てみると、30~40といった結果が出ました。

 つまり、販売開始からこれまで、平均すると1ヶ月に30~40といった数が購入されていると推測できます。

 あくまで平均なので、1ヶ月あたりの販売数が30を切る月があれば、40を超える月があった、となります。

 

 仮に、1商品あたりの販売利益を300円とします。

 Sさんの、もっとも売れている商品の価格が600円。

 DLsiteでは、販売金額の約50%が利益となるため、販売利益を300円と仮定しました。

 1つの商品が1ヶ月に30が購入されているとしたら、月間の売上は9000円です。

 

 販売数の調査をした後、約1ヶ月後に、直近1ヶ月の販売数の推移を見てみました。

 販売数の増加値は、8~15。

 平均値は11~12。

 切りよく見積もって、各商品の月間販売数を10とします。

 前述の平均月間販売数より半分以下という数値になっていますが。

 例えば、もっとも購入された商品が販売されたのは、2019年。

 ちょうどコロナが流行り始めた時期なので、TRPGのプレイヤーやシナリオライター、ゲーム制作者が増えたことで、平均月間販売数が30以上となったのではないか、と考えます。

 時勢が代わり、販売されてから時間が経って、1000人以上の方々が買われたのであれば、月間の販売数が落ちるのも当然だと思います。

 

 では、このSさんはどんな立ち絵素材を出しているのか。

 結論から言えば、ファンタジー系デザインのキャラクターです。

 

 調べてみると、例えばTRPGで需要の高いキャラクターのカテゴリは、現代系です。

『CoC(Call of Cthluhu、クトゥルフ神話)』という、現代人が異形の怪物や非現実的な事件と対峙するストーリーを主軸としたTRPGです。

 現代人が~、とあるように、CoCやそれを基にした二次創作シナリオで使われる立ち絵の多くが、現代的なデザインのキャラクターです。

 

 だというのに、DLsiteの立ち絵素材では、ファンタジー系デザインの立ち絵がもっとも売れている。

 なぜSさんの作品がもっとも売れているのか。

 それこそ、複数の商品が販売数1000超えと、圧倒的な成果を出しています。

 購入している方々は、どんなことに着目しているのか。

 どういったニーズがあって、Sさんの商品が購入されているのか。

 

 DLsiteの商品には、レビュー欄があります。

 レビューはBOOTHにはないため、購入者のニーズやインサイトを調べるのに、すごく役立ちました。

 レビューの内容としては、例えばこんな感じです。

・ファンタジー作品に使いやすいジョブ
・商業作品かと見紛うようなクオリティ
RPGにおいてキャラのグラフィックはかなり重要
・安くてクオリティが高い
・豊富な差分で使いやすい
・男女で用意されているのも嬉しい
・重装備の戦士などは用意することが難しい
・用途や方向性が明白

 

 クオリティについての言及がありますが。

 実際、DLsiteに限って言えば、販売されている立ち絵の多くが、そこまでクオリティは高くありません。

 だとすると、ある程度画力勝負ができる、と言えるのではないでしょうか。

 

 クオリティに伴って、用途や方向性といった使いやすさもそうです。

 剣士や魔法使い、重戦士や拳闘士など、ファンタジーRPGでの使用を押し出したコンセプトになっています。

 表情差分が10種以上あって、外観においても、戦闘服と平服とで差分があって、作品の傾向やストーリーの展開に合わせて使い分けることができます。

 職業ごとに男女でキャラが用意されている点も含めて、用途が幅広くて使い勝手がいいです。

 他の商品を見てみると、ターゲットや用途が分かりにくいものがあります。

 どんな人に、どういったシチュエーションで使ってほしいか、それが伝わりにくい作品は、当然ながら販売開始から1度も購入されていない、という結果があります。

 

 クオリティ、用途や方向性、そして価格が購入の要因になったのではないかと思います。

 多くの商品が1体のキャラクターの単品売りである中、Sさんの商品は複数キャラのセット販売。

 かつ、1体あたりの単価が100円前後と、他と比べたら破格な金額です。

 

 レビューで言及されていたことでもありますが、立ち絵を依頼した場合、安くても1体数千円、高いと1万円を超えます。

 表情差分があれば、さらに料金が割り増しになります。

 そんな中、豊富な外観や表情の差分があり、職業ごとに男女のキャラが用意されていて、編集や加工のできるPSDファイルがついている、という至れり尽くせりな内容であれば、格安に感じること請け合いです。

 

 Sさんの商品が購入されているニーズやインサイトをまとめると、以下のようになります。

・総合的なクオリティが高い
・豊富な差分で用途が幅広く、コンセプトに一貫性があって方向性が明確で、使い勝手がいい
・1キャラあたりの単価が破格

 

 Sさんの商品の特色が見えた時、ふと思いました。

 ――なぜ、特化型の商品がないんだろう? と。

 ファンタジー系の職業を幅広く取り扱って、1つにまとめた商品が並んでいるものの、特定の職業に絞った商品はありません。

 

 もしかすると、そこを狙えば差別化ができるんじゃないか? と考えて。

 さらにレビューの中に、「重装備の戦士などは用意することが難しい」とありました。

 そこで結論が出ました。

 ――重戦士に特化した立ち絵素材集を売ろう、と。

 

 重戦士のような、甲冑に身を包んだキャラクターの立ち絵は数が少なくて。

 これまでファイアーエムブレムなどで、甲冑を描いてきた経験がそこそこあります。

 自分が興味があること、できることが活かせると感じて、今回の商品である「重戦士詰め合わせ『甲-Armored-』」を制作するに至りました。

 

 コンセプトが決まったら、内容と価格、そして目標月間販売数を考えました。

 

 内容と価格は、Sさんの商品に倣いました。

 男女各3体ずつで、600円。

 

 Sさんの商品のように、ファンタジー系キャラクターの詰め合わせといった商品は、他にもあります。

 ただ、価格は3000円前後で、販売数はかなり少ないです。

 販売期間も踏まえれば、1ヶ月に1つ売れればいい、みたいな感じで。

 

 1点ものなら、3000円で売っても安いくらいですが。

 ダウンロード商品のように、どれだけ買われても売り切れることのない無在庫商品であれば、薄利多売の方が利益が高くなる場合があります。

 かつ、Sさんのように1商品あたりの内容が豊富であれば、より購入される可能性が高まるのではないか、と仮説を立てました。

 薄利多売どころか、豊品薄利多売といった感じで。

 

 であれば、もっと安くすればいいんじゃないか? となるところですが。

 あまり安くしすぎても、売れない可能性が高まります。

 それよりも、その商品で1ヶ月にどのくらいの利益を得たいか、を考えると、販売価格600円、販売利益300円でもギリギリです。

 

 そして目標月間販売数。

 これと販売利益を掛け合わせて、1ヶ月にどのくらいの利益を得たいか、となります。

 制作着手開始時の目標は、20でした。

 販売利益300で、販売数20であれば、1商品あたりの月間利益は、6000円。

 とりあえずスマホの通信料が余裕で賄える金額です。

 

 ただ、Sさんの直近1ヶ月の販売数の追跡調査を行った時、目標販売数を見直しました。

 DLsiteとBOOTHで、合わせて10売れたら十分。

 20売れたら最高、という感じで。

 

 となると、1商品あたりの利益は下がります。

 しかし、今後継続的に商品を出し続けることで、総合的に利益を上乗せしていけばいいです。

 とりあえずニーズやインサイトを調べて、理解して、それに沿った商品を作って、継続的に出していくという戦略があって、参考となるロールモデルがあるので、ゆくゆくは通信費と水道光熱費を、あるいは家賃を賄えるくらいのキャッシュポイントを構築できるんじゃないかと。

 

 さて、そして実際に商品を完成させて、出品したわけですが。

 出品申請をしたのが10月10日。

 販売開始となったのが10月11日。

 販売開始日を含めて4日経過して、これを書いている本日で5日目となります。

 現状、販売数はDLsiteが2、BOOTHがゼロです。

 4日経過で販売数2となると、2日に1つ売れた、と考えられるわけで。

 これだと、月間目標販売数を達成するのは、厳しいな、と感じました。

 

 そもそもとして、商品としてのクオリティはSさんには届いていません。

 少しでも早く、重戦士キャラの立ち絵でポジションを取ろう、と焦りました。

 とはいえ、DLsiteもBOOTHも出品後の商品の差し替えができます。

 つまり、これから内容を追加して充実させていける、ということ。

 現在、武器を持った甲冑姿の立ち絵しかありませんが、これから武器なしや平服といった外観の差分も加えていこうと考えています。

 

 また、Sさんの立ち絵は着せ替えができるような構成になっています。

 外観差分と合わせて、素体も作った方がいいな、と。

 

 とはいえ、Sさんの商品に倣った内容にしても、二番煎じどころか劣化品、パチモンであることには変わりありません。

 差別化には至らない、ということです。

 

 そこで、販売方法についても試行錯誤してみようと考えています。

 

 例えば、複数キャラのセット売りではなく、1キャラ単体売りをあえてしてみる、と。

 それじゃ、他の商品と変わらないと感じるかもしれませんが。

 同人作品を出しているプロのクリエイターは、ある程度作品を出した後、まとめ売りや合本版といった形式で、過去作品を改めて販売しています。

 であれば、年齢や外見、装備、職業など要素の異なるのキャラクターを様々出してみて、どういったキャラに需要があるかを調べつつ、人気のあるキャラをまとめてセット売りしてみる、とか。

 特定の要素に特化したキャラをまとめてみる、とか。

 ソシャゲでいう、特定のスキルや人気投票などで選ばれたキャラクターの排出率を高く設定したガチャみたいなスタイルです。

 このような複合的な販売形式を掛け合わせたら、相乗効果で利益が高くなるんじゃないか、と仮説を立てました。

 

 あくまで仮説なので、これから実際に試す必要があります。

 失敗するにしても、そこから新しい戦略や戦術が生まれるのだと、今回の出品で経験することができました。

 やってみないと、なにも得られません。

 やるしかないです。

 

 

 さて、今回の立ち絵素材制作の振り返りとしては、こんなところです。

 1ヶ月半ほど、ひたすら商品づくりに打ち込んで、様々な学びや経験を得られました。

 特に、マーケティング思考でリサーチをして、戦略を立てて、それに基づいて商品づくりをして、失敗を痛感する、というのは大きかったです。

 なにかと手際が悪くて作業が非効率的でしたが、ある程度経験値が得られたので、今後は制作スピードが上がるかと思います。

 以前、立ち絵制作・販売について6ヶ月は集中的に取り組む、と宣言したので、まだまだ継続して商品を出していきます。

 

 では。