月間報告を書いて、上半期報告を書いて。
さらに週間報告も書かなければいけないことに気づいて、3日連続の更新となります。
今回は、ビジネス書の活用事例を残そうかと。
6月最終週から7月第1週にかけて完成・公開したイラストは、ありません。
依頼のイラストを描いたり、打ち合わせをしたり、ココナラのプロフィールやサービスページの改修に時間を費やして、完成させることができませんでした。
依頼はさておき。
ココナラのプロフィールやサービスページを大幅に改修しました。
特にサービスページは、検索キーワードを主軸に、どんな依頼者をターゲットにしたいかを絞り、自分がどんな提供ができるかというコンセプトを突き詰めました。
その際に参考にしたのが、『白いネコはなにをくれた?』。
マーケティングを生業とする、佐藤義典氏のビジネス書です。
マーケティング戦略についてのビジネス書ですが、気づいたらあっという間に最後まで読み通していました。
すごく面白いんです。
特にマーケティング戦略の全体像を解説する本編。
これが小説のようにストーリー形式になっていて、読みやすい。
構成は、さながらハリウッド映画。
仕事の調子がひどく落ち込み気味な主人公が、しゃべる白いネコに出会い、マーケティングを学びながら自分自身や仲間、会社の在り方と向き合い、圧倒的なライバルと競って大きなプロジェクトの案件を勝ち取る、というもの。
ストーリーを挟みつつ、マーケティングの一例を説明する書籍は様々あるかとは思いますが。
長編小説並のストーリー1本を通して、マーケティングの全体像を解説する書籍はなかなかないんじゃないかと。
さて、マーケティング解説のビジネス書として、そして長編小説としても素晴らしい本書。
この中にある、『戦略BASiCS』というマーケティングのフレームワークがとても参考になりました。
『戦略BASiCS』は、以下の5つの要素で構成されるフレームワークです。
B:Battlefield:戦場・競合相手
A:Asset:独自資源
S:Strength:強み、差別化
C:Customer:顧客
S:Selling Message:メッセージ、売り文句
ココナラのサービスページ改修で、このフレームワークを基に考えたこと、実践したことがこちらです。
■テーマ・キーワード:背景
これまで受注した依頼――特に一枚絵の制作サービスを振り返ると、
・MV用の一枚絵、背景
・HPの背景
で、MV用のイラストがもっとも多い。
一枚絵の制作と銘打っていましたが、もし検索で私のサービスを見つけるとするなら、「イラスト」「一枚絵」ではなく、「背景」ではないかと思いました。
「MV」もあるかと思いますが、過去のやり取りを見返すと、「背景」の単語が一番多かったです。
そこで、サービスのテーマを「背景」に絞りました。
ここから『戦略BASiCS』のフレームワークを活用しつつ、どんな風にサービスページを構築するかを考えていきます。
■Battlefield:戦場・競合相手
「どこで」「誰と」戦うか。
「どこで」は、もちろんココナラです。
さらに掘り下げれば、「背景」というキーワードでの検索結果。
「誰と」は、同業者――イラストレーターです。
その中でも、「背景」のキーワードでの検索結果に並ぶイラストレーターが競合相手の対象となります。
背景が描けるイラストレーターはもちろんですが。
私の場合、キャラクターと背景が描けるため、同じくキャラクターも背景も描けるイラストレーターも競合とみなします。
さらに。
現在私のサービスページで設定している金額が、7000円。
これはあくまで最低条件での金額ではありますが。
となると、5000~15000円あたりの価格を打ち出しているイラストレーターが、もっとも近い競合相手と考えられます。
■A:Asset:独自資源
独自資源とは文字通り、自分固有の資源です。
自分だからこそ持っている「なにか=資源」が、次のStrengthに繋がります。
とはいえ、なにをもってして独自資源とみなすのか。
例えばマクドナルド。
他のハンバーガーチェーンと比べた時、なにが優れているか。
1つは店舗数。
2023年4月時点で、2951店舗。
これは圧倒的な数値で、次に多いモスバーガーの1281店舗とは、2.3倍もの差があります。
参考:【2023年版】ハンバーガーチェーンの店舗数ランキング|日本ソフト販売株式会社
また、商品をスピーディに提供できるサービスやそのためのノウハウもまた、マクドナルドだからこその特徴だと思います。
本書では、店舗数のような目に見えるをハード資源、ノウハウのような目に見えない資源をソフト資源と呼んでいます。
では、私独自の資源はなにか?
イラストレーターとして見れば、
・キャラクターも背景も描ける
がまず思い浮かびました。
とはいえ、キャラクターも背景も描けるイラストレーターは、私以外にもたくさんいます。
これでは独自資源たりえません。
そこからさらに掘り下げる必要があります。
その際、これまで描いたイラスト、依頼やリクエストで制作したイラストを見返しました。
そこから見えたのは、
・ストーリーやコンセプト、世界観を意識したイラストが描ける
・描き込み量、情報量の多いイラストが描ける
・同じ構図で異なる雰囲気のイラストが描ける
といったもの。
例えば、このあたり。
こういった、ストーリーや世界観、コンセプトを意識したイラストを描く技術や発想力が、私にとってのハード資源になるのではないかと。
それ以外にもなにかないか、と考えました。
参考にしたのは、これまで受けた依頼での、依頼者様とのやり取りや、取引の進め方。
そこから見えてきたのが、こちら。
・依頼内容から希望のイメージを深掘りするヒアリング
・イラストのクオリティを高めるための情報や参考資料の収集
・希望のイメージを明確にして、それに近づけるための、複数のラフ提案
これらはノウハウとして、私のソフト資源に当たります。
それから、私の立場的なもので、
・ニートだから使える時間が多めにある
というのも資源になります。
自虐的かもしれませんが、時間が多くあるからこそ、
・依頼者の希望から、ニーズだけでなくインサイトまでじっくり考えることができる
・依頼者の希望のイメージに近づけるためのラフ提案が複数できる
・ラフ提案の際、なぜその案を出したかを伝えるメッセージを考えることができる
といったメリットがあります。
……とはいえ、イラストレーターが本業の方であれば、当然のことなんでしょうが。
そして、競合相手にはなさそうな特徴として、
・小説執筆の経験がある
・執筆するだけでなく、何度も推敲(読み直して書き直す作業)した経験がある
・自作小説の表紙や挿絵、キャラクターデザインを描いて、電子書籍として出版した経験がある
を加えました。
現在、小説のイラスト制作のサービスを休止しているのに、どう関わるのか、どう役に立つのか? と。
本書では、「理念」や「やる気」も独自資源と定義しています。
やる気で言えば。
私は処女作【青春回帰の幻想戦記】第1巻で、約16万文字(400字詰原稿用紙400枚ほど)を執筆しました。
そこから、
・キャラクターとして人物を19人、モンスターを15種25体の、合計44
・表紙1枚
・カラー口絵2枚
・挿絵25枚
と、全部で72のイラストを、224日――つまり7ヶ月12日かけて描き上げました。
この自著1巻にかけた時間や労力といった努力、やる気もまた、独自資源たりえると思います。
独自資源をまとめると、以下の通り。
・ストーリーやコンセプト、世界観を意識したイラストが描ける
・描き込み量、情報量の多いイラストが描ける
・同じ構図で異なる雰囲気のイラストが描ける
・依頼内容から希望のイメージを深掘りするヒアリング
・イラストのクオリティを高めるための情報や参考資料の収集
・希望のイメージを明確にして、それに近づけるための、複数のラフ提案
・ニートだから使える時間が多めにある
・小説の執筆や推敲の経験から、物事を多角的に客観視できる
・自作小説の表紙や挿絵、キャラクターデザインを描いて、電子書籍として出版した経験がある
■S:Strength:強み、差別化
独自資源が出揃ったので、それを基に、ココナラの「背景」というキーワード検索での強み・差別化を考えます。
本書では、差別化は3つに大別できると書かれています。
◎手軽軸
◎商品軸
◎密着軸
◎手軽軸
⇒近い、早い、簡単、便利、低価格
・安い料金で依頼できる
・3日や1週間など、短期で納品してもらえる
◎商品軸
⇒高品質、最新技術、高価格
・1枚当たり1万円以上だけど、ハイクオリティ、描き込み量が多い
◎密着軸
⇒顧客ニーズに徹底的に応える、カスタマイズ
・綿密なヒアリング、作業工程ごとに確認して修正対応
・予算や納期、依頼内容に合わせたクオリティの調整、価値の提供
まず独自資源を基に私はどの軸に当たるかを考えると、密着軸か商品軸です。
手軽軸はまったく当てはまりません。
依頼者のニーズをヒアリングで伺いつつ、構図ラフやカラーラフで希望のイメージに近づけていく、という手順を踏んでいます。
また、キャラクターと背景を描くため、描き込み量もそれなりにあります。
イラストのクオリティは、下手過ぎず、素人からやっと脱したあたりでしょう。
だとすると、商品軸で差別化するのはまだまだ難しい。
もはや消去法ですが、密着軸で差別化することになりますし、これまで密着軸的なスタンスで依頼をこなしてきました。
では、「背景」で検索した際の競合相手と比較するとどうか。
パッと見た限り、手軽軸の方はそうそういません。
商品軸か、密着軸。
あるいはその両方が成立している方もいます。
競合相手の多くが、自分より実績が多くて、イラストのクオリティも高いです。
実績が少ない、クオリティもまあまあそこそこ(高いという意味ではなく)なら、密着軸を主軸に、手軽軸(低価格)で売り出す以外にありません。
現状、サービス一覧での表示価格は7000円で、検索結果トップページの方々と比べれば安い価格となっています。
そしてサービスページ内では、密着軸として依頼者の希望に応えつつ制作を進めていく旨を伝えることに。
少し長い目で見れば。
実績が増えるに伴って料金を値上げした際、競合相手とどう差別化するか? が問題になるのは明らか。
圧倒的な差別化を図る案はまったく思いつきません。
なので、今のところ考えられるのは、競合相手が受けなかった、受けられなかった依頼をおこぼれとしていただく、でしょうか。
まとめると、
・現状は実績が少ないから、競合相手より低価格で売り出す
・綿密なヒアリングや複数のラフ提案で、依頼者のニーズに応えるサービス提供を
となるのですが、差別化としてはなかなか弱いな、と。
もし、競合相手との差別化が難しい場合にどうするか? という対策もあるにはありますが、それは別の書籍の内容になるため、ここでは割愛します。
■C:Customer:顧客
自分はどんな相手と取引をしたいのか。
ということで、マーケティングにおいてはもっとも重要な要素です。
「誰でもいいから依頼してほしい」よりも「こういう人から依頼してほしい」とターゲットを絞る方が、自身の商売のコンセプトや商品、そして「どこで」「誰と」戦うかが明確になります。
私の場合、「背景」がテーマで、ターゲットは「動画サイトに楽曲を投稿するクリエイター」です。
つまり、「歌い手」「Vtuber」「Vsinger」「ボカロP」「動画クリエイター」といった方々です。
さらに掘り下げると、
・作品の世界観にこだわりがある人
・ほしいイメージをしっかり汲み取って、それを形にしてほしい人
・サービスページやプロフィールを事前にしっかり確認する人
・お互いに気持ちよく取引ができるよう、礼節を持ち合わせている人
がターゲットです。
そのため、
・安ければいい
・伝えたイメージからさくっとイラストを描いてほしい
・サービスページやプロフィールをロクに確認しない
という人はターゲットではありませんし、依頼内容や相談のメッセージで違和感を覚えたら断る覚悟でいます。
■S:Selling Message:メッセージ、売り文句
依頼者の「この人に依頼しよう」と思う判断基準は、見える・触れる「メッセージ」だけです。
言い方を変えれば、自分の提供できる価値をしっかり伝えるためにも、メッセージを組み上げて、整えて、提示する必要があります。
例えば、本書の『白いネコはなにをくれた?』について。
「マーケティングの本だけど面白かった」
と、
「マーケティングの本なのに長編小説並のストーリーがメインで、終盤思わず泣けるほど面白かった!」
とでは、どちらが興味をそそられるでしょうか。
ココナラでは、サービスページの上部にサンプル画像を並べることができます。
今回から、コンセプトに沿った文章を加えた画像を並べることにしました。
これまでは、「私はこんなイラストが描けます」という意味合いでイラストだけを並べていましたが。
それだけでは競合相手とは差別化ができません。
「私はあなたにこういった提供をすることができます」という文章を添えることで、私がどんなイラストレーターで、どんなサービスを提供するかが伝わるように工夫してみました。
また、サービス内容で、私がどんな風に制作を進めるか、どんなことを心掛けているか、イラスト以外の提供や価値が伝わるような文章を記載しました。
レイアウトも意識しています。
依頼者がサービスを探す際、スマホをメインに使っているだろうと考えています。
その上で、一番伝えたいことはなるべく簡潔に、あえて上下の行間を空けて読みやすくなるようにしました。
加えて、「【】」や「●」のような記号を使うことで、視線誘導を図りました。
以上が、『白いネコはなにをくれた?』の戦略BASiCSを基に、ココナラのサービスページを改修する際に考えたことや実践したことです。
本書以外にも参考にした書籍はありますが、今回はこれの影響がもっとも大きいです。
はたしてこの改修が今後どう影響するかは分かりませんが、これまでとは違う手応えを感じているのは確かです。
しばらく様子を見つつ、必要だと感じたらまたなにかしら改修すると思います。
ココナラを使って得られるのは、依頼を達成することで得られる実績や収入だけではなくて。
こういったマーケティング戦略を考える、実行するという経験値もあると思います。
イラストを描く時間をごっそり削りましたが、今年はマーケティングやブランディングを伸ばそうと決めています。
今後、長期的な活動を見据えるのであれば、必要な投資だったのではないかと。
そして、この記録もまた、長期的に見れば、いつか商品になるだろうと考えています。
なかなかイラストレーターで、「この書籍を読んで、こんなことを考えて、実行したら、こういう結果が、成果が得られた」という、書籍ベースの経験談がなくて。
逆に、個人的な経験談に基づく方法論はたくさんあるんですよね。
「Vtuberのモデルを作りましょう」とか「Vtuberのファンアートを描いてRTしてもらってUGCを狙って依頼をもらいましょう」とか。
分かりやすいのはいいにしても、トレンド的で、本質が見えにくいな、と。
本当に大事なのは、そういうのではないんじゃないか、と。
さて、かなり長くなりました。
自分で読み返すのもなかなか面倒に思えるくらいに。
月間、上半期、習慣の報告を書き終えたので、いい加減イラスト制作に――特にSNS運用のための二次創作を進めないといけません。
では。